「たくさん買ったねー!」

「ったく、荷物持ちはツライぜ」

夕暮れの道を、土浦と香穂子はのろのろと歩いていた。

「ま、仕方ないか。こないだはお前に買い物付き合ってもらったしな」

「そうそう!お互い様ってやつだよ!」

「少しは恐縮しろよ…。おい、少し休憩してってもいいだろ?」

「おっけ。じゃあ、そこの公園で休もっか」

土浦は先に公園のベンチに座った。荷物をどっかりと下ろす。
香穂子はジュースを買ってくるから少し待ってて、と近くの自販へ走っていった。

「ん?」

ぱたぱたと走る音と、子供の声。
どうやら子供が公園へ遊びにきたようだ。

サッカーボールを持った男の子と、妹らしき女の子。

「サッカーしにきたのか?」

土浦はつい声をかけてしまった。

「うん」

「にいちゃんもサッカーやってるんだ。サッカー、楽しいよな」

「おにーちゃんもサッカーやってるの?!ならおにーちゃんも一緒にやろ!」

「お、おい…」

男の子に服をひっぱられて、土浦は仕方なくサッカーに付き合ってやることにした。

「……………」

しばらくサッカーに付き合っていると、女の子がつまらなそうにこちらを見ているのに気付いた。

土浦は、男の子に「もう暗くなるぞ?」と言って家に帰るよう促した。
そして、女の子の前にしゃがみこんだ。

「退屈させちまって悪かったな。これ、おわびだ」

「くれるの…?」

土浦は、ビニール袋から自分が買ったお菓子を取り出し、女の子に渡した。

「男ってのは、すぐ目の前のものに夢中になるんだよ。ごめんな?………って、こんなこと言ってもわからないか…」

「あっ!お前、お菓子もらったのか?!………ありがとう、おにーちゃん!」

「ありがとう!」

「ちゃんとお礼が言えて偉いな。気をつけて帰るんだぞ」

子供たちを見送ると、香穂子が帰ってきていないことを、はっと思い出した。
30分はたっているのに、おかしい。自販機なんてすぐそこにあるのに。土浦は心配になって公園を出ようとした。

「土浦くん」

「うわっ!」

香穂子は公園の木の陰に立っていた。

「お、お前。なんでそんなところにいるんだよ。ずっといたのか?」

「ええ」

「…なんで出てこないんだよ」

「ずいぶん楽しそうに遊んでおられたようですからっ!」

ぷい、と顔を背ける香穂子。

「なにヘソ曲げてんだ…?」

「………。土浦くんってさー。女子に怖がられてるとかなんとか言ってても、結局女の子に優しいんだよねぇ」

ぼそ、と言われたことを、土浦は聞き逃さなかった。

「はぁ?」

「土浦くん、優しくしてた。…私以外の女の子に」

「…お前、子供にヤキモチやいてたのか?」

そのまま土浦に背を向けて何も言わない香穂子が可愛くて仕方なくて、土浦は後ろからぎゅっと抱きしめた。

「ガキっぽいお前も好きだぜ」

「………ガキじゃないもん」

妙におかしくなって、土浦はぷりぷり怒る香穂子をよそにしばらく爆笑していた。